胡蝶の夢〈第1巻〉 (新潮文庫)



胡蝶の夢〈第1巻〉 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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そんなに大きな展開はないが、今後の展開が楽しみな第一巻

 「花神」を読んで、蘭学と歴史とのつながりに興味を持ち、本作品を読んでみようと思いました。

 歴史的に大きな事件は起こりません。強いて言うならば、オランダの軍医としてポンペが来日することくらいです。それだけに司馬遼太郎の他の幕末作品(「花神」「竜馬がゆく」等)に比べると少し面白味に欠けますが、今後の展開がとても楽しみな終わり方だったのでよかったと思います。

 第二巻以降もとても楽しみです。蘭学と歴史がどう関わっているのか、幕末史に松本良順はどのような形で関わってくるのかが楽しみです。
医学の歴史

幕末の御典医・松本良順と語学の天才伊之助の話です。

坂本竜馬とか新撰組なんかに比べると派手ではないし有名ではないかもしれませんが、
私の中では松本良順はもっと世の中に認められてもいいのではと思います、、、
きっとこの本を読んだ人もそう思うに違いありません!!
大河ドラマとかにして欲しいくらい。(でも地味かな!?)

良順の名があまり有名ではないのは、
やはり負けた幕府側の人間だったからでしょうか??
つくづく私たちが教えられる日本史ってどうなん??と考えてしまいます。

その点彼を取り上げた司馬遼太郎はすごい。
司馬遼太郎独特の歴史背景説明文も満載ですので、医学の歴史も一緒に学べます。
漢方医と蘭方医の対立などなど。

是非、医者という立場から見た幕末をご覧ください。

医療に国境も身分もない

背景には、幕末の志士たちの活動や新選組やら、西南諸藩の動きやら、幕府の最後のあがきやら、色々と盛りだくさんなのですが、
蘭学者の松本良順をはじめ、関寛斎や島倉伊之助の活動を通して見ている・・・という感じでもあり、すんなりとその時代に入りこむことができたように思います。

当時の封建世襲制というのは、身分が上ほど愚かな者が多く、特に奥御医師の場合がそうでした。
「将軍様のお脈をとる」
・・・ということが、「恐れ多い」行為であるために、医師は僧侶たちと同じように身分階級の埒外にあり、
しかし、奥御殿に出入りするものだから表役人も噂を恐れて手を出せない。
奥御医師が一般の患者を診察する・・・なんてもってのほか!という時代にあって、

「医師にとって、ただ病人があるだけである。患者がどういう階級に属し、どれほどの富をもち、あるいは持たないか、ということは、なんの関係もない」

というポンペの影響を受けた弟子たちは、変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していく。

あらためて、「医療に国境も身分もないよね?」と当たり前のことを感じてしまった。
時代が漢方一辺倒から蘭学へ・・・そしてドイツ医学へとシフトしていく過程の一部を描きつつ、
そこに生きた医師たちの様々な生き様を描いた幕末の一面です。


余談ではありますが「胡蝶の夢」とはどこから名付けられたのか?と疑問に思って調べてみたら、
荘子の思想を表す代表的な説話でした。
「荘周が夢を見て蝶になり、蝶として大いに楽しんだ所、夢が覚める。果たして荘周が夢を見て蝶になったのか、あるいは蝶が夢を見て荘周になっているのか。どちらともわからぬ、どちらでもかまわない。」
無為自然、一切斉同という荘子の考え方だそうです。

幕末、医学もまた、ひとつの革命思想であった

昭和51年11月から54年1月(司馬53歳から55歳当時)に朝日新聞に連載された小説である。

司馬の作品には戦争や革命といった政治的な題材が多いが、本作はいっぷう変わっていて、幕末を医療から俯瞰している。

実は西洋医学は、270年続いた士農工商という強固な身分制度を根底から覆す革命的思想であった。なぜなら、西洋医学は、医は身分の貴賎を問わない、という思想をごく当たり前のものとしていたからである。身分を問わず入院できる「病院」というものは幕末まで日本には存在しなかった。だから、大変不思議なことではあるが、病院を創設するということは、そのまま江戸期の社会秩序の破壊行為だったのである。

本作は、徳川慶喜の侍医であった松本良順、その師ポンペ、良順の弟子、島倉伊之助を中心に、幕末の医療が明治維新にどうかかわっていったかを描いている。良順はポンペを通じて西洋医学を学び、医の前に四民は平等であるという思想を得て、当時の被差別階級の解放にも力を尽くした。他に順天堂の創始者、佐藤泰然、東大医学部の祖、伊東玄朴、大阪大学医学部の祖、緒方洪庵など、多士済々、綺羅星の如き登場人物たちに彩られている。

またいつもとは異なり、解説者としての司馬自身はあまり登場せず、より物語色の強い作品になっているため、歴史だけでなくストーリーそのものを楽しむこともできる。ちょうど「翔ぶが如く」の連載を終えた直後に書き始められたが、50代半ばになって作風もさらに重厚さ、思想性を増してきた。歴史性と物語性の調和に優れた小説として是非、お勧めしたい作品である。
新しい時代に翻弄される若者たちの苦悩を感じます。

 蘭学の医師、松本良順と島倉伊之助の生き様を描いた、幕末の物語。「人は、その才質や技能というほんのわずかな突起物にひきずられて、思わぬ世間歩きをさせられてしまう」と雑感の中で述べられています。 蘭学で人生を切り開きながらも、時代は幕末から維新に移り、学問や医学も変わりつつある中で苦悩する若者たち。
 時代の流れに身をおいていると社会全体が見えないまま、その中での若者たちの心を感じることができます。



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